願望型医療への発展
今までの医学の定義を考えると、病気治療とい枠におさまらない願望の実現を行う治療への周辺の広がりあります。
人間の願望は、そこがないのですが、例えば人間の美しいということでもネット上に存在する画像について考えると画像としての美しさのスタンダードが存在していることを理解できます。映像上の美しさは、極端な合成可能な美しさを含んでいます。人間の何を美しいと感じるのかを合成することは、整形的医学に決定する力があるのだとも、装飾のように改変していくことができるものとなっているともいえます。
また、経済的価値と一体となって、外見の美しさのプレッシャーは益々大きくなっていると考えます。
知的ドーピングの汚染
ドーピングの問題は、プロのスポーツ界では、馴染みのある話ですが、筋肉に限らず、メンタルでも、覚醒剤の汚染が進んでいることは、結果を残さなければならないことへのプレッシャーからくるもので、刑法上の社会的矯正には全く収まりきれない問題です。
また、先進国の指導的エリートの薬物依存は増加すると分析されており、『「マインドドーピングは、「気分明朗剤(Stimmungsaufheller: Aufhellerは漂白剤の意味もある)」とよばれる。』(医療の本質と変容4 九州大学出版会 エンハンスメントから願望実現医療へ 松田 純)ーアメリカ人の10%がSSRI(抗うつ薬)の常用があることを指摘しています。
エンハンスメントの拡大
「エンハンスメント」の概念よりも広い「願望実現型医療」(注)の領域は、従来の先端技術医療を適応するものに限らず、民間療法、化粧などの美容、健康食品など医学を越えた文化論的な意味合いの中で理解する話となっています。
美と欲望は、人間が生きていく上で引き離せない関係があり、そこで明確に自己をたもちえることは難しいことだと思います。ただ、常に欲望の何が必要なものであるのかを問い直す必要があります。破壊的なエネルギーを持つものだけに人間が持ち堪えることができるのか難しい問題です。
コントロールの方法
政策的には、適切な規制が必要となります。また、医療面では、健康保険と自由保険との関係を適切にコントロールすることが社会に求められるとともに、人間自身を見つめ直す、文化的な議論を行っていくこと、「本来の美」とは何かに対する深い思惟が大切なのだと思います。
(注)ドイツの応用倫理学者ケトナー(2006年)の定義ー自分が行きたいと望む生の 方へ身体構成を近づけること
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