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共存が虚構からの出口となるー見田宗介の「共存」

現代の社会の状態

「現代は超高層のバベルみたいな文明になった。」(見田宗介 超高層のバベル 講談社選書メチエ 2019年)

現代人の精神構造

バベルの塔は、人間が神に近づくことを願って無限に高く塔を積み上げて、神の怒りをかって破壊されてしまう話です。見田は、原始の段階から高いところまで積み上がったものは全部現代人の中にあるけれど各フロアに軋みが生じていると表現しています。

成功への鍵ー経済との関係

最上階は、現在の社会ということになりますが、より的確に現在を把握して、再表現してやれば、評価が高くなるという構図が見えます。

成功するというのは、不可視な塔の先端部分を少し見せてやることで経済的な成功も掴むことができることは、情報の中で繰り返し語られている物語です。実際、成功者とどの会社がそうなのかいくつか共通のものが思い浮かぶし、イメージは簡単にできると思います。

塔の一番高いところは、リアルな実態を感じないのですが、それをフィクションの時代と見田は表現しています。サブプライム、GMなどが形成したフィクションは一時的に時代を突破する力がありますが、最後は大きく破綻することで終結を迎えます。


塔の最上階には神の国にはとどかなかった壊れたフィクションの梯子が転がっているような気がします。

円環構造からの脱出の鍵

限定された地球の資源の中で、このままでは、幻想を作り出しては、繰り返し破綻することになります。


そこで、見田は出口として、「共存」というキーワードを示しています。生物学的な種の共存から説明していますが、現在のフィクションの世界からは、あまりに遠い話に感じるのは、「自然」というバベルの塔の最下層の話になっているからだと思います。

現代人には最下層を意識するチャンスが少なくなっています。

「ミトコンドリアとか、我々人間の一つ一つの細胞とか、あるいはそもそも動物がなぜ生まれたかということ自体、その太古の時代における自然環境の激変に対する微生物の共存にかかわる問題なのです。」

(見田宗介 現代社会はどこに向かうか 弦書房 2012年)

精神の粉ミルク

「超高層のバベル」は対談になっていて、河合隼雄が「核家族になるということは大変なことなのに、みんなは楽になったと思っている。核家族化して、どうしても共同体とか大家族で与えていた「精神の粉ミルク」が急に欠乏して、職業としての粉ミルク係の必要が出てきた」といっています。

子育てはひとり親でも物質的なのものは代わりがあるが、精神的なものは話が別だという考え方で、その不足感は否めないということです。

共存というワードは「鍵」になるのですが、共存を求めても実態のない共存への出口は、現実の生活の中で、見定めることが困難となっている状況なのかもしれません。


基本的に息詰まっている状況であれば、その鍵を使って扉を開けて前に進んでいくしかないのだと思います。


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